〈原因・病態〉
滲出性中耳炎とは、鼓膜の奥(中耳腔)に滲出液が溜まる病気です。滲出液は水の様なものや、にかわ状のものなどがあります。直接の原因は耳管(中耳と鼻の奥とをつなぐ管)の機能が悪くなることです。耳管機能を悪化させる原因として、小児(特に4〜5歳)では、アデノイドの肥大や副鼻腔炎(蓄膿症)、急性中耳炎からの移行が主です。成人の場合は鼻の奥の腫瘍が原因となることもあります。高齢者の場合は、管の開閉を司る筋肉・神経の老化によることが主です。
では、どうして滲出液が中耳腔に溜まるかといいますと、耳管の機能が悪化すると中耳への空気の流通が途絶え、中耳内の酸素や二酸化炭素が毛細血管の中に吸収され、そのかわりに中耳内の組織から水が滲出してくるのです。その後、滲出液は徐々に濃縮され、にかわの様になってきます。
最近ではアレルギーそのものによる滲出性中耳炎や、細菌に対するアレルギー反応による滲出性中耳炎なども多く見られます。また、非常に難治性で好酸球(白血球の1つ)が浸潤するものもあります。
〈症状〉
耳閉塞感(水の中に入った感じ)や難聴、低音性の耳鳴り(ボコボコ、ポコポコなど)などが一般的です。
〈治療〉
中耳の換気を改善させる治療が主体になります。鼻炎や副鼻腔炎がある場合はそれに対する治療(鼻処置や去痰剤、抗アレルギー薬、抗菌薬)が中心となります。保存的治療で改善しない場合には、鼓膜切開や鼓膜にチューブを入れる手術が必要になることもあります。反復する場合やアデノイド肥大が著しい場合には、チューブと同時にアデノイド切除を一緒に行うこともあります。
(1)原因疾患の治療
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎等の治療の為に投薬・鼻処置及びネブライザー吸入治療法を行います。
(2)鼓膜切開
耳管通気療法にもかかわらず滲出液が減少しない場合には、難聴を取り除く意味も含めて鼓膜を切開して中の滲出液を取り除きます。鼓膜にしばらく穴が開いているのが良いのですが、普通数日で閉じてしまいます。
(3)鼓膜チューブ留置術
鼓膜切開等による治療にもかかわらず治療に抵抗して滲出性中耳炎が悪化する場合に耳管のかわりに一時的に中耳腔の換気をする為のチューブを手術的に鼓膜に入れます。(一般には外来手術です。)
(4)耳管通気療法
鼻から耳管を通して中耳腔の換気をはかる。これにはゴム球を用いる場合(幼児)、金属の通気管を用いる場合(7歳〜9歳以上)の2種類があります。以前は良く行われていた治療ですが、現在は耳管閉口部に傷をつけてしまう問題や、鼻の状態によっては急性中耳炎を誘発してしまうことがしばしばの為、あまり行われなくなっています。